パンデミック発動。その時企業はどうする?〔第二回〕
~忍び寄る新型インフルエンザ。情報システム部門はどう動く。~

新型インフルエンザの感染が発生した際、初動行動のタイミングが大変重要になってきます。発生時期から拡大する状況を監視し、情報を収集していくことが重要です。情報を元に分析し、どのような対応をとるか、その迅速な判断と決定が初動行動のタイミングを逃さず、業務を継続して遂行させることが可能となります。

開催されたセミナー情報

講 演

「事業継続マネジメント」
- 新型インフルエンザに対する情報システム部門の対応と課題 -

開催日

2009年6月17日(京都)

第一回では、不測の事態が発生した時、企業活動を止めずに少ないリソースを活用しながらも、その事態を乗り切るための「事業継続計画」の策定をどのように進めていけばよいか、お伝えしていきました。
企業の根幹を担う情報システム部門にとって、「事業継続計画」策定とその体制づくりを強化しておくことで、企業の取引にとって重要なシステムを稼動させ続けることができます。これにより、企業の損失を最小限に食い止めることが可能となるのです。
今春発生した、新型インフルエンザ蔓延によるWHOのパンデミック発動宣言は、記憶に新しいかと思います。今回の新型インフルエンザも、今冬、再度流行すると予想されています。またインフルエンザ発生の歴史を見ても、感染を繰り返し続けることにより新たな型を形成し、より強力なウィルスに変化していく可能性も否定できません。
このような新型インフルエンザが発生したことを前提とした「事業継続計画」を策定するには、どのように考えて進めていけばよいか、第二回ではお伝えしていきます。

初動行動のタイミングを見極める

今春の新型インフルエンザでは、その発生段階によりWHOよりフェーズ3~6まで段階的に宣言が報道されました。こういった指標は、日本国内でも厚生労働省が発生段階による区分を定めています。(下記図参照)日本国内では新型インフルエンザが発生した場合、国が「新型インフルエンザ対策本部」を設置し、発生段階の区分に基づき発生段階を決定し、国民へ宣言します。

厚生労働省「新型インフルエンザ対策行動計画」より

情報システム部門でも、「事業継続計画」策定する際にはこの発生段階の区分を目安とし、これをベースにシミュレーションし、計画を策定しておくことで、段階的な対応を実施していくことが可能となります。「例えば、第二段階では、情報収集体制を立ち上げよう。第三段階に入った時点では、システム運用を止めないよう緊急体制の準備をしておこう。感染拡大期に入れば、緊急体制に移行し、蔓延期に入ったなら、企業経営に影響が大きいものから優先的に稼動させよう、データセンターであれば、エンジニアを篭城させようなど、段階に応じたシミュレーションを考えていくことが重要なのです。状況に応じて様々な仮説を立て、シミュレーションをしておくことで、初動行動のタイミングを逃さず、迅速に実行に移すことができるのです」と中西氏は語りました。

「遅らせる」「拡げない」初動行動の考え方と対策

初動行動のタイミングを逃さないためには、どこまで対策を考えて、どこまで対策を施しておかなければならないのかを決めておく必要があります。そこで、新型インフルエンザによる「事業継続計画」の前提条件を考えていきます。
まず、厚生労働省「新型インフルエンザ対策行動計画」には、いくつかの前提条件が規模や時間軸を元に提示されています。こういった前提条件において、イギリスやアメリカでもガイドラインが提示されています。
人的リソースの前提条件で、被害想定作成上の1つの仮定として最も基本となるのは、「欠勤率」です。欠勤率は、業種・地域により流行のピークに差がありますが、20-40%が設定されています。「欠勤率は、事業の稼動を左右します。BCPシナリオを作成する上で、スタンダードになっている欠勤率は40%です。実際、担当しているお客様もこの40%を目安にしています。本人ではなく、家族が感染した場合に自宅待機になり出社できない従業員も想定し、欠勤率が40%になった場合、出社しているリソースの最適配置をどのようにすればよいかを考えておくことが重要です」と中西氏は語りました。
また、今春の新型インフルエンザが流行った関西の高校では、1週間の学校閉鎖を行いました。「実際感染者が治療のため欠勤する期間として、欠勤期間の目安は10日間程度を想定しています。また、リソースの復帰は順番に徐々に回復していきますが、第三段階で継続される流行期間は、約8週間程度を目安として考えておく必要があります」また、中西氏は対応の基本的な考え方を、下記表のように発生段階毎に説明しました。

「新型インフルエンザに際して、経済産業省が各情報サービス・ソフトウェア産業関連団体の長に行った依頼は、“事業運営における感染機会を減らすための工夫、従業員に対する時差通勤などの検討”でした。感染を完全に防ぐことはできません。第二段階でのキーワードは「遅らせる」ことが重要です。早い段階で情報をキャッチしておくことで、自社への感染を遅らせるという対応を打っておくことができます。また、第三段階でのキーワードは、「拡げない」です。企業内での感染を拡げない対策を実行することで、欠勤率をあげないことに繋がります。初動行動の対策を考え、事業への影響度を下げることを目的に対応策を考えておく必要があります」と中西氏は説明しました。

そこで、具体的に「遅らせる」、「拡げない」ための工夫を整理しておく必要性があります。今春の新型インフルエンザにともなう各企業の対応として、社員のマスク着用の義務付けや、社内主要箇所でのアルコール消毒の徹底などが見受けられました。その他、来訪者の検温の義務化や来訪制限などを実施した企業もあります。 公共交通機関を使用した場合、人との接触を避けるために時差出勤奨励や自転車・徒歩などによる公共交通機関を使用しないなどの対策を講じる方法も考えることができます。こういった対策を取る場合、労務上の問題に対する影響も考え、労働組合との事前のコンセンサスを取る一方で、労務に関する見直しも必要になってくる可能性もあります。  「平常時より、アルコール消毒液やマスクの確保・管理をしておき、情報システム部門は、社内で配布する優先順位を上げ、優先されるべき部門として定めておくこともひとつのポイントです。また、情報システム部門への入退室管理の徹底として訪問者の履歴を取り、把握しておく必要性もでてきます。これは感染する要素を少なくし、感染を未然に防ぐだけでなく、感染者追跡と割り出しが発生した際、迅速に対応できるという効果があります。優先部門に対しては、こういった対応を第二段階から実施していくことを定めておくのも有効です」と、初動行動のシミュレーションとして中西氏は言及しました。

厚生労働省「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」より

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